―――――――神代本家


春「喜界特産の黒糖……」

春「私は常にこれを常食としてきた」

初美「いっつも食べてますねー、1日にどれくらい食べるんですか?」

春「大体1日2袋ちょっと……」

初美「……糖尿病とか大丈夫なんですかねー」

初美「いくつの時から食べてるんですか?」

春「3歳の時には、今くらいのペース」

初美「あ、はるる」

春「?」

初美「あそこにポルシェが止まってますよー」

春「うん」

初美「もしはるるが黒糖を食べてなかったら」

小蒔「ちくわ大明神」キリッ

初美「あのポルシェくらい買えてるんですよー」

春「あれは私のポルシェ……」

初美「姫様何やってるんですかー」



初美「で、高校1年のはるるがポルシェなんか持ってるわけないですよね」

春「嘘ついた、ごめんなさい」

小蒔「なんだか変な神様を降ろしてしまったみたいです」

初美「……まぁ、それは置いといてなんでそんな黒糖好きになったんですかー?」

春「あれはまだ私が赤ん坊の頃……」

初美「あれ、回想入る奴ですかこれー!?」





「じゃあちょっと、春の世話お願いね」

良子(5)「オーケイオーケイ、問題ありません」

「親戚中てんやわんやでねえ」

良子「任せてください」



良子「えーと、ミルクの温め方……」

春「あうー」

良子「ふんふむ、人肌程度に温める、と」


良子「こんなもんですかね」

良子「……一応、味もテイスティングしておいたほうがいいでしょうか」


ペロ


良子「……まず」

良子「こんなまずいものを赤ん坊に飲ませるわけにはいきませんねー、味を調えなくては」


【黒糖】


良子「……ちょうどいいものが置いてありますね」



良子「お味はどうですか、ハル?」

春「あんまー!」ゴクゴク

良子「喜んでくれたみたいですね」

春「………」

良子「ああ、お腹いっぱいになって眠くなったんですか」

良子「オーキードーキー、お姉さんが子守歌を歌ってあげましょうねー」

良子「one sheep two sheep……」




春「という訳……」

初美(良子さん、それは子守歌じゃないですー)

初美(っていうか乳児に黒糖って大丈夫なんでしょうか……)

小蒔「春ちゃんは赤ん坊の時から黒糖大好きだったんですね!」

春「それが自慢……」


春「でも、最近黒糖に飽きた」

初美「そうなんですかー?」

小蒔「いっつも同じおやつだと飽きてしまいますよね、わかります」ウンウン

春「だから、日本全国を回って新しい嗜好品を探してくる」

小蒔「わあ、楽しそうですね」

初美「だから昨日の夜旅行鞄なんか出してたんですか……」

春「姫様も行く?」

小蒔「はい、ぜひご一緒させてください」

初美「……しょうがないですね、こうなったら一番のお姉さんである私が行かないわけにはいきませんよー」

春「えっ、来るの?」

初美「なんでちょっと嫌そうなんですかー!」

春「……冗談」

初美「じゃあ、ちゃちゃっと準備して出発しましょうか」

小蒔「おー!」





―――――――新幹線車内


初美「新幹線も博多まで開通して便利になりましたよねー」

春「正直使うのは初めて……」

小蒔「黒糖をかじる音をさせてない春ちゃんは新鮮ですね!」

春「恥ずかしい……」

初美「まぁ、静かでいいですよー」


「お弁当、お菓子にお飲み物はいかがですか」


小蒔「あ、車内販売ですね」

春「何か買う?」

初美「お弁当とお茶でいいんじゃないですかー?」

春「了解……」


春「お弁当とあったかいお茶3つずつ」

「申し訳ありません、温かい飲み物でしたら紅茶とコーヒーしか」

春「……じゃあ、お弁当を一つお子様弁当に変更で」

初美「意味が分かりませんよー!?紅茶3つでいいじゃないですか!」

「……2610円になります」

春「はい」


小蒔「駅弁って、ちょっと興奮しますよね」

初美「割高ですけどねー」

春「冷たいご飯って割と好き……」モグモグ





初美「着きましたねー福岡!」
小蒔「知ってる方に会えるといいですね」

初美「そうそう都合よく……」


哩「………」

姫子「……」


初美「居ましたよー!?」

姫子「わっ!?」ビクッ

哩「永水女子の人らか……なんしよん?」

小蒔「メンタイコゥ食いてーよ」

哩「は?」

初美「あらら……またなんか変なのを降ろしてしまったみたいですねー」

小蒔「ふざけるなよファッキンジャップが。メンタイコゥ食わせろよ!」

初美「イギリスあたりの神様を降ろしてしまったんですかねー」

春「とりあえずお帰り頂く……」ヌギッ

姫子「きゃあああああ!変態!変態ですよぶちょー!」

哩「白昼堂々ストリップ……」

初美「は、はるる!ストップですよー」



哩「……で、何の用?早く済ませてほしいっちゃけど」

姫子「………」ビクビク

初美「えーと、まぁ」

春「私が黒糖に飽きた」

哩「……やけんなんなん?」

初美「それで、全国を回ってるんですよー」

小蒔「黒糖の代わりを探してるんです」

哩「……はぁ、それでメンタイコゥを、と」

初美(以外とノリがいいですよこの人ー)

姫子「ちょ、ちょっと買ってきますね」



姫子「お待たせしました」

春「………」モグモグ

春「うん、おいしい」

小蒔「おいしいですね」

初美「いいですねー、ぷちぷち」

小蒔「これに決めちゃいますか?黒糖の代わり」

初美「これ1日に2箱も食べるんですかー?」

姫子「プリン体とりすぎで通風になりますよ」

小蒔「知らないんですか?女性は痛風にならないんですよ」ドヤッ

初美「……最近は食生活の変化で女性も罹るみたいですけどね」

哩「ちゅーか、塩分の取りすぎで死ぬわ」

初美(……黒糖も、既にどうかなってレベルなんですけどねー)

春「……私の求める物はここにはなかった……」

初美「じゃあ再出発ですかー」
小蒔「お世話になりました」

哩「あ、ああ」

初美「またねーですよー」

姫子(もう来んでほしいです……)


哩「……行ったか」

姫子「あああああああ!」

哩「ど、どげんしたと?」

姫子「お金貰うの忘れてました!高かったのに!すっからかんです!!」

哩「今日はこれ以上不運に見舞われる前に帰るか」

姫子「はいぃ……」

哩(涙目の姫子かわいか……)




初美「良い人たちで助かりましたよー」

小蒔「まったくもって!」

春「次はどこに行こう……」

初美「このまま行くと、大阪ですかねー」

春「大阪はあまり寄りたくない……」

初美「なぜですかー?」

春「インハイの時の大阪の人、わたしが黒糖を勧めても食べなかった……」

初美「そうですか……」

小蒔「わたし、奈良がいいです!」

春「姫様のご希望とあれば」

初美「じゃあ、新大阪で乗り換えですねー」



初美「もうすっかり夜ですねー」

春「とりあえず泊まれるところを探す……」

小蒔「あ、第一住人発見です!」

玄「…………?」

初美「こんにちはー」

玄「はい、こんにちは」

初美「わたしたち、今日の宿を探してるんですよー」

玄「ああ、そうなんですか?」

小蒔「このままでは野宿になってしまいます」

春「この時期でも夜はもう寒い……」

玄(!!!!)

玄「わ、私の家が旅館なんですけど、それで良ければいらっしゃいませんか?」

初美「やりましたよー」

春「渡りに船……」

小蒔「願ったりかなったりですね!」

玄(ふふふふふ………)

玄(ダメ、まだ笑っちゃだめなのです)

玄(道を歩いていただけですてきなおもちが2人も転がり込んでくるなんて!)

初美「楽しみですよー」

玄(はずれが1人紛れ込んでるけどね……)


玄「着きましたよー」

小蒔「とりあえず荷物を置いてゆっくりしたいですねー」

玄「うちは温泉が自慢なんですよ!一息ついたら是非どうぞ」

春「なるほど」

初美「その前に、ここに来た目的のほうを果たしてしまいませんかー?」

玄「?」

初美「実は、はるるの黒糖の代わりを探しているんですよー」

玄「はあ……よくわかりませんけど、これでもどうぞ」

初美「何ですかーこれ?」

玄「鹿煎餅ですよ」

初美「……どうぞはるる」ポイ


春「……………」

春「……」パリパリパリ

初美「おお!オノマトペも黒糖と似てるしもうこれでいいんじゃないですかー?」

春「味がない……」

小蒔「鹿が食べるものですからね」

春「却下」

初美「はぁ、まだ続くんですか……」

小蒔「もう置いといてお風呂に行きませんか?」

初美「そうですねー」





―――――――深夜


ギシッ……ギシッ……


初美「?」


初美(なんか音がしますよー)

初美(はっ!まさかこれは旅館ホラーにありがちな『実は掛け軸をめくったらお札がびっしり』パターンですかー!?)

初美「はるる!はるる!起きてくださいー!」

春「んん……栗の甘みがなんとも……もう一個いただきます……もぐもぐ……」

初美「って一昨日の私のおやつのモンブラン食べたのはるるだったんですかー!!」ゲシゲシ

春「……こんな夜中になに……?」

初美「悪霊!悪霊です!出番ですよー!」

玄「お~も~ち~」

初美「ぎゃああああああああああああああああああ!!!」

春「姫様!早く起きる!逃げる!」

小蒔「な~んですか~」ボケー

初美「急いで急いで!」





初美「はぁ、ひどい目にあいましたよー」

春「もう今後一切奈良には近づかない」

小蒔「うぅ、始発で出発なんて眠いです……」

初美「新幹線で寝ればいいですよー」

春「このままいくと次は東京……」

初美「白糸台にでも寄ればいいですよー」




菫「で、東京まで来たと」

初美「ですよー」

照「淡、適当にお菓子を出してあげて」

淡「あいあいさー!」

尭深「お茶どうぞ……」

小蒔「美味しいですよね、東京バナナ」モムモム

初美「やっと人心地つきましたよー」

春「東京なら何か変わった気に入るものが見つかるかもしれない……」

菫「うーん、何かあったか?」

尭深「お茶なんてどうでしょう」

春「いくらなんでも葉っぱそのままはちょっと……」

尭深「いや、お茶好きの子が増えたらうれしいなぁなんて、いえなんでもないです……」

菫「淡はどうだ?」

淡「ふぁにー?いまおふぁひたふぇるのにいそふぁしいー」

菫「飲み込んでから喋れ」

淡「お菓子食べるのに忙しい、って言ってたんだよー」

淡「わたしはコンビニのお菓子とかあればそれでいいかなー」

春「わざわざ東京まで来た意味がない……」

菫「亦野はなんかないか?」

誠子「うーん、特に思いつきませんね。生魚はちょっと危ないし」

菫「照はどうだ?」

照「……実家から送ってきて、持て余してたんだけど、これ」

小蒔「なんでしょうか、これ」

初美「佃煮ですかー?」

照「うん、蜂の子の」

春「……それ、やめる!はやく仕舞う!」

照「味は悪くないんだけど」

菫「1年の時に照にそれを貰った時は、私も本気で嫌がらせかと悩んだものだ」

春「結局ここにも何もなかった」

小蒔「じゃあもう次は北海道でしょうか?」

初美「東日本のことは東京以外ほとんどわかりませんからねー」

春「お邪魔しました……」

菫「まぁ、力になれなくてすまないな」

照「じゃあね」モゴモゴ

淡「照ぅ、口からイナゴの足がはみ出してるよ?」





―――――――北海道


初美「ふぅ、やっと着きましたねー」

春「適当に、タクシーで大きい街へ向かう」

初美「ん……もう手持ちのお金がないですー」

初美「はるる、建て替えておいてくれませんか?」

春「無理」

初美「り、旅行に出る前に行きの旅費は、わたし持ち、帰りははるる持ちって決めてましたよねー?」

初美「若干釣り合い取れてないんですから、ちょっとくらいお願いしますよー」

春「持ってない……」

初美「え?」

春「奈良の旅館に、全部おいてきた……」

初美「」

初美「ひ、姫様!携帯は……」

小蒔「荷物は春ちゃんに全部預けてました……」

初美「ど、どうするんですかー」

春「大丈夫、わたしに考えがある」





初美「って、」




初美「なんでこんなことになってるですかー!」

春「叫ぶと体力を消耗する……」

小蒔「寒いですね……」

春「映画みたいに空港暮らし……」

小蒔「わあ、ちょっと楽しそうです」

初美「……で、どうする気なんですー?」

春「まず、明日の朝になったら、お客さんの荷物運びやゴミ拾いでお金を集める」

小蒔「奉仕活動ですね!」

初美「……で?」

春「一人分の旅費が集まったら、誰かが鹿児島に戻って助けを求める」

小蒔「完ぺきな作戦です!」

初美「一体何日かかると思ってるですかー!っていうか食事とかどうするですよー!」

春「……盲点!」

初美「まるで駄目じゃないですかー」


小蒔「……お腹すきました」

初美「蜂の子食べておけばよかったですかねー」

春「…………」

春「………あの、これ」スッ

初美「黒糖じゃないですかー」

春「非常用に、少しだけ持ってきてた」

小蒔「わぁ、みなさんでいただきましょう」

春「はい」

初美「………」ポリポリ

小蒔「………」ポリポリ

春「…………」ポリポリ

春「色々試してみたけど、やっぱりこれが一番かも」

初美「そうですねー、甘すぎて味はともかくですけど、今は長靴いっぱい食べたい気分ですー」

小蒔「虫歯になりそうですね」

春「とりあえず、明日から頑張る……」

初美「そうですよー、3人いれば何とかなりますー」

小蒔「はい、頑張りましょう!」






初美「朝ですよー」

小蒔「椅子が固くてぜんぜん眠った気がしません……」

春「とりあえず、荷物運び頑張る」

霞「じゃあ、これをあっちの搭乗ゲートまでお願いできるかしら」

初美「!?」
小蒔「!?」
春「!?」


霞「何やってるのよ、もう」

初美「か、かすみちゃあぁぁぁん」

春「なぜここに……」

霞「小蒔ちゃんの携帯が奈良にあるようだったから、奈良まで行って、そこからは駅や空港のカメラを調べていったのよ」

霞「まったく、人騒がせな子たちねえ」

小蒔「でも、空港暮らしもちょっと楽しかったですよ!」

初美(一晩だけですけどねー)

霞「さ、早く帰りましょう」

春「うん、帰って長靴いっぱいの黒糖を食べる……」

霞「あ、こんな騒ぎをしでかした罰として春ちゃんは一週間のおやつ抜きと境内全部のお掃除を課すわよ」

春「そんな……!」

霞「それにしても、旅館の子がもっと素直に情報を吐けば昨晩のうちに着いたかもしれないのにねえ」



玄「オッパイオバケコワイオッパイオバケコワイオッパイコワイ……」

玄「オセンベイガサイコウデスノダ?」

穏乃「玄さん、朝からぼーっとしてどうしたんだろうねー」

憧「何か変なもの食べたんじゃないの?」

穏乃「えー?」

玄「アラタチャー!イッショニオベントウタベヨ!」

玄「アラタチャー!アラタチャー!」

灼「なんか今日の玄気持ちわる……」



カン


はるるは黒糖ジャンキー可愛い