―――――――都内某所


照「あつ……はやく部室に戻ろう」


照(あれ?校門の前に巫女が居る)

小蒔「……」

 


小蒔「どうしましょうか……」


照(……たしかあれは、神代さん。困ってるみたいだし、声をかけたほうがいいのかな?)


照「あの」

小蒔「はい?」


小蒔「あっ!宮永さん。こんなところで奇遇ですね」

照「うん、まあ」

照「こんなところで何してるの?」

小蒔「いえ、それが……初美さんとはぐれてしまって、探してるんですよ」

照「……あの、しっかりしてそうな人はどうしたの」

小蒔「霞ちゃんですか?霞ちゃんなら、たぶんホテルに居ますよ」

小蒔「個人戦の前に、初美さんと二人でこっそりホテルを抜け出して東京見物に来たのですけど……」


小蒔「見ての通り迷ってしまいまして、ホテルまでの戻り方もわからなくて」

照「そ、そう」

小蒔「はいっ」

照「……それならとりあえず、ウチの部室に来る?」

小蒔「いいんですか!?」


照「たぶん平気だと思うけど」

小蒔「わあ!それじゃあ、せっかくなのでお邪魔します!」

照「じゃあ、そういうことで」

 

 

 

 

―――――――白糸台部室


照「ただいま」

菫「おかえり……って」

菫「なんで神代が居るんだ」

小蒔「すっ、すみません!帰ります!」

照「ケーキ屋の帰りに居たから拾った」

菫「捨て猫みたいに言うな」

小蒔「……」ビクビク

照「ほら、菫が怖いから怯えてる」

菫「私のせいなのか……」

菫「……いや、神代。別にいちゃだめだとかそういうことを言いたかったんじゃないからな」

照「だってさ」

小蒔「そ、そうですか……?」

菫「ああ」


菫「だが、そもそもなんで連れてきたんだ」

照「ホテルまでの道がわかんないんだって。とりあえずうちで保護することにした」

菫「そういうことなら、他の部員に調べさせよう」

照「尭深は?」

菫「奥でお茶の準備してるよ」

照「……そう」


尭深「用意、できましたよ」

菫「噂をすれば」

照「……カップ、多くない?」

尭深「大丈夫です」

 


淡「たっだいまー!」

誠子「ただいま戻りました……」

初美「ですよー」

 

尭深「ね?」

菫「ああ……」

 


 


菫「で」

淡「んー?」

菫「その子はどこから連れてきた」

淡「道端で拾った!」

菫「全くお前たちは二人して……」

誠子「はぐれた神代さんを探すとかで、人手を借りたいとのことだったので連れてきたんですよ」

初美「連れられた先で姫様が待ってるとは思いませんでしたよー」

小蒔「ずいぶんと探しました」

初美「それはこっちのセリフですー」

照「まあ、なんにせよ探してた人が見つかってよかった……」


淡「ねーねー、そんなことよりご飯にしようよー」

菫「ちょうどお茶も入ったところだし、そうするか」

誠子「薄墨さんの奢りなんですよ」

初美「ありがたくいただくといいですよー」

菫「……え」

照「大丈夫なの?」

初美「協力料の前払いですからねー。霞さんの雷が落ちるのに比べればこのくらい屁とも……無くは無いですけどー」

小蒔「なにを買ってきたんですか?」

淡「ハンバーガーだよー」

小蒔「不思議な形ですね……」

照「食べたことないの?」

小蒔「初めて食べます」

初美「はー、お茶がおいしいですねー。巴の淹れたお茶とは大違いですー」

尭深「それはどうも……」

小蒔「……」パク

小蒔「…………」モグモグ

淡「どう?」

 


小蒔「……よ」

小蒔「世の中にこんなにおいしいものがあったなんて……」

淡「ハンバーガーぐらいで大げさだねぇ」

初美「まあ、神代家では和食しか出ないですし、ごくたまに外食や店屋物でも和食しか食べませんからねー」

菫「いまだにそういう家ってあるんだな……」

淡「あ、コマキ。こっちにケンタもあるよー」

小蒔「健太さん?」

淡「ケンタッキー。フライドチキンだよ」

小蒔「ちょっと食べてみますね……」サク

 

小蒔「~~~~~~っ!」

小蒔「なんでしょう、これ……こんな変わった味なのに、もっと食べたくなる……」


誠子「もしかして、こういう持ち帰りの牛丼とか」

尭深「コンビニのサラダパスタとかも……食べたことない?」


小蒔「はい!」コクコク

淡「じゃあ私が食べさせてあげる!あーん!」

 

 


菫「まるで普通の物が食べられるようになった初孫を前にしたジジババだな」

照「餌付けされてるみたい……」

初美「姫様大人気ですねー」

菫「……そういえば、お前が一年の時の先輩たちもあんな感じだったな」

照「そうだった?」

菫「ああ。入れ代わり立ち代わりクッキーやらアメやらを詰め込まれてた」

照「……覚えてない」

菫「お前がいくらでも食べるものだから、そのうち先輩たちのお小遣いが底を尽いた」

菫「そして今度は自分の食事を削る者が現れて問題になった」

菫「それで虎姫では節度を守るためにティータイムの時間が設けられるようになったんだ」

照「ううん……そういえばそんな感じだった気がする」

照「とりあえず、わたしもケーキあげてみたい。物を食べてる神代さんかわいい」

初美「姫様は本当に幸せそうにものを食べますからねー」

 

 

 

 

初美「お世話になりましたー」

小蒔「わたし、ショートケーキ以外のケーキを初めて食べました!」

照「個人戦が終わったら、今度は別なケーキ屋に連れて行ってあげるから……」

菫(結局照の奴も餌付けに参加してたな……)

淡「またねー」

 

 

 

 

―――――――神代家


初美(―――と、そんなことがあったのが3週間前)


小蒔「ごちそうさまでした」カチャン

霞「あら、もういいの?」

小蒔「はい」


初美(そりゃ学校帰りにあれだけ買い食いすればお腹すくはずがないですー)


霞「最近食欲があまりないみたいねえ」

初美「そんなことはないと思うのですけど……」

霞「そういえば、最近小蒔ちゃんは初美ちゃんと一緒に下校することが多いわね」

霞「何かあったのかしら?」

初美「別に何もないですー」

霞「本当に?」

初美「ホントですよー」

霞「…………」


霞「これ、2週間前の個人戦の記念写真なんだけど……」

霞「今の小蒔ちゃんと、微妙に違うと思わない?頬のあたりとか」

初美「ええー……?ぜんぜんわかりませんー」

霞「ほら、二人もこっち来てよく見て!」


春(我関せず)スィー

巴「さ、洗い物洗い物ー」スィー

 

霞「もう!二人とも!」

初美(正直胸がまた微妙にでかくなったように見えますが……)

霞「……まあ、いいわ。何か変わったことに気付いたらまた言ってちょうだい」

初美「はいですよー」

 


 

 


初美(―――と、そんなことがあったのが1か月前)


小蒔「ごちそうさまでした」カラン

霞「あら、もういいの?」

小蒔「はい」ノッシノッシ


初美(これはそろそろごまかせなくなってきましたー)ダラダラ

霞「……初美ちゃん?」

初美「さ、さーて今日は宿題がいっぱい出てるんでしたー」

霞「は つ み ち ゃ ん?」

初美「……はい」

 

霞「で、小蒔ちゃんはなんであんなことになってるの?」

初美「じ、実は……夏休みからずっと姫様は買い食いしてるんですよー」

霞「買い食い?駅前の屋台の回転焼きとかかしら?」

初美「そ、それが……吉野家とかマックとかミスドで」

霞「な、なんですって!」

初美「あとは、ケーキ屋なんかにも……」

初美「今日も学校の帰りにビッグマックと照り焼きとフィレオフィッシュを買ってました」

霞「最初に小蒔ちゃんにそんな体に悪い物を最初に食べさせたのは……ま さ か初美ちゃんじゃないわよねぇ?」

初美「ち、ちがいます」ブンブン

霞「とりあえず、初美ちゃんは向こう1か月間おやつ抜きね」

初美「そ、それは想定外ですー!罰が重すぎますー!」

霞「……で?犯人は誰なの?」

 


 


―――――――白糸台高校麻雀部部室


菫「はあ?それで私たちに責任をとれと?」

霞「ええ」

照「そんなことを言われても……」

初美「お願いしますよー、このままじゃ私一生おやつ抜きにされてしまいますー」

菫「ううん……何か、いい手立てはない物か」

誠子「ハンバーガーは、ミミズの肉を使ってますよって教えてみればいいんじゃないですか」

淡「なにそれきっしょ」

照「昔流行った都市伝説だよね……」

霞「純粋な小蒔ちゃんはたぶん信じるでしょうけど……」

尭深「あの……」ドサ


菫「でた!尭深のお茶コレクション!」

尭深「これなんか、いいと思います」

霞「なんでしょうか、これは」

尭深「シルベスタギムネマ茶です」

霞「はい?」

尭深「えっと、要するに糖分の摂取を抑える効果のあるお茶なんです」

霞「まあ、それは素晴らしいですね」

尭深「ただ……」

菫「何か問題があるのか?」


尭深「淡ちゃん、お菓子あげるからちょっと飲んでみて」

淡「ええー、わたしが毒見するの?」

菫(すごくまずいのか?)


淡「んー……ちょっと渋いけど、別にまずくは無いよ!」ズズー

尭深「じゃあ、これお礼のどら焼き」

淡「わーい、ありがとたかみー!」


菫「なんだ、何ともないじゃないか」

霞「ほんとにこんなのが効くんですか?」

淡「砂糖の吸収を抑えるんでしょ?だったら別にわたしが飲んだ意味ないよね」モグモグ

淡「だって私こんなにスリムだ……し……」モグ…

淡「……」


照「淡、どうしたの」


淡「おええええええええ!まっずうううう!」

菫「おわ、いきなりどうした」


尭深「このお茶を飲むと、甘さを感じなくなるんです」

誠子「つ、つまり大星は……」

尭深「たぶん、どら焼きを食べてるはずなのに、粘土を噛んでいるかのような感覚を感じているはず」

照「」ゾゾゾゾゾ

照(昔、咲が作った粘土細工をかじったことがあるからわかる。あれはすごく気持ち悪い……)

尭深「あとは、これを神代さんに飲ませていれば」

霞「いずれケーキやドーナッツを食べた時に……」

誠子「でなくても、糖の吸収は抑えられるって訳か」

尭深「……」コクリ


霞「ご協力感謝します」

初美「ですよー」バタン

 

淡「えっ、もしかしてわたしこのままなの?」

淡「もう一生、テルと一緒にケーキ食べたりできないの……?」

淡「そんなの……ひどいよ……」グスッ

尭深「だ、大丈夫。あとで元に戻るお茶を淹れてあげるから」ナデリナデリ

淡「ほ、ホント?」

尭深「うん」

淡「ありがとー!たかみーは命の恩人だよー!」

菫(そこまで言うか……)

誠子(そもそも尭深のお茶のせいでそんなことになってるんだけど……)

尭深(ほんとは1時間くらいで元に戻るんだけど、こっちのほうが面白くなりそうだし黙ってよう)

 


 


―――――――神代家


霞「お茶、よし」

初美「ミスド、よしですよー」

霞「調査は抜かりないわよね?」

初美「はい。姫様はいつもフレンチクルーラーとエンゼルクリームを食べてましたー」

霞「上出来ね」


霞「みんな~、おやつにするわよー!」

 

 

巴「今日のおやつはドーナツなんですね、珍しい」

春「ポン・デ・黒糖、ある……?」


初美「姫様ー!姫様ー!おやつですよー!」


小蒔「んー……?」ヒョコ

初美「早く席についてください!おやつにしましょう!」

小蒔「今日はドーナツですか」

霞「たまにはこういうのもと思ってね」


小蒔「うーん……もう食べ飽きちゃったので今日はいいです」

霞「え゛っ」


小蒔「あ、それから初美さん。明日からはまっすぐ帰るので大丈夫です。今までありがとうございました」

初美「そ、そうですかー」

小蒔「わたしの分はみんなで食べちゃってください」ノッシノッシ


初美「…………」

霞「…………」

初美「……わ、わたしたちの苦労は……」

霞「……なんだったのかしら……」

 

 

 


―――――――3か月後


霞「小蒔ちゃん、すっかり元に戻ったわね」

初美「ジャンクフードは飽きるのも早いですからねー」

霞「これにて一件落着ね」


初美「そういえば、余ったお茶の葉はどうしたんですかー?」

霞「普通に戸棚に置いたわよ」

初美「そうですかー。捨てたらもったいないですからねー」

アハハハハハハ

ウフフフフフフ

 

 

 

 

 

春「ちょっと一休み……」

 

春「何か、良子がバルバドス産の黒糖を買ってきてくれたんだよね……」

春(バルバドスってどこだろ……)

 

春「とりあえず、お茶と一緒にいただこう」コポコポ


春「ふぅ~……」ズズ

 

 


春「んん……お茶の渋みとこの甘さがなんとも……」ポリポリ

春「………………!?」

 

 

春「げほっ!ごほっ!うえええええぇ!」


春「な、なにこれ……」

 

ガラッ

良子「あ、ハル……さっそく食べてるんだね」

良子「テイストはどうでした?喜んでいただければいいのですが」

春「…………」プルプル

春「良子のばか!いじわる!」ダッ

 


良子「……り、理不尽です」



カン!



※この記事は書け麻記事です!