―――――――有珠山高校 2階渡り廊下


揺杏「うっあー、よく寝た」

成香「爆睡でしたね……」

揺杏「まあね」

揺杏「体育と情報の授業は休憩時間でしょ~」

成香「そうでしょうか?わたしも体育はあまりすきではないですけど」


誓子「なっるっか~♪」

成香「わあ!?ちかちゃん?」

誓子「そうだよー!うーりうりうりうりうりうり~」

成香「ぐえ……ちかちゃ、くるし……」

揺杏「桧森先輩、成香がつぶれますよ」

誓子「え?」


誓子「うわ、ほんとだ……」

成香「…………」グッタリ


誓子「…………」

誓子「へちゃげてる成香もかわいい~!!」

揺杏「あの、その辺にしないとマジ死にますよ」

誓子「はっ!なるかごめんね!」

成香「い、いえ……」


キーンコーンカーンコーン


誓子「あっ、授業始まっちゃう。またね二人とも」

揺杏「ええ」

成香「またね」


揺杏「しかし、ホント仲良いよねあんたら」

成香「そうでしょうか?」

揺杏「うん」


揺杏「たまに、羨ましくなるよ……ほんとたまにだけど」

揺杏「さて、うちらも急がないと」


成香「あわ、そうですね……」






―――――――放課後 有珠山高校 小教会


由暉子「――――――」


揺杏「ありゃ、誰かいる」


由暉子「……?」


揺杏「……って、なんだユキか」

由暉子「どうかしましたか、岩館先輩」

揺杏「別に、ちょっと教科書の忘れ物を取りにね」

由暉子「の、割にはずいぶん量が多いですね」

揺杏「授業じゃなくて、『学校から帰るとき』に『忘れて』いくからね」

由暉子「……それは、忘れ物で無くて置き勉というんです」

揺杏「まあまあ。細かいことは気にしない」

揺杏「で、ユキは何してたん?」

由暉子「私は、普通にお祈りをしてから部室に行こうと」

揺杏「そう、えらいねえ」

由暉子「たまには岩館先輩もしていかれては?」

揺杏「…………」

揺杏「そうだね。たまにはそういうのも悪くないかも~」


由暉子「外で待っていますから、声を掛けてください」

揺杏「うん」





揺杏「ユキぃ、半分持ってよ」

由暉子「知りません」

揺杏「ええー」

由暉子「だいたい、岩館先輩が置き勉するのが悪いんでしょう」

揺杏「まあ、ユキの言う通りなんだけどさ」

由暉子「妙に素直ですね」

揺杏「わたしはいつでも自分に素直だよー?自分のしたい事をしたい時にしてる~」

由暉子「……そうですか」

由暉子「じゃあ、少しだけ持ってあげます。その代わりに部室の前の自販でジュースを奢ってください」

揺杏「え、見返り要求すんの?」

由暉子「私が『岩館先輩とジュースを飲みたい』と思ったから、思ったことを口にしたまでです」

揺杏「おお、上手く乗せるねぇ」

揺杏「はいはい、じゃあよろしく」ドサドサ

由暉子「……さりげなく、分厚いのばかり寄越していませんか?」

揺杏「半分は半分だも~ん」

由暉子「……仕方ないですね」

揺杏「さて、部室までがんばろー」

由暉子「…………」





ガコン

揺杏「ほい」

由暉子「ありがとうございます」

揺杏「……にしても、よく飽きないねソレ」

由暉子「一口いかがですか?」

揺杏「………………」

揺杏「……チョコおしるこかぁ……」

揺杏「要らないよ」

由暉子「そうですか」


由暉子「部室、電気ついてないですね」

揺杏「だね」


ガラッ

揺杏「やっぱ、誰もいないか」

由暉子「ふたりではさすがに麻雀できませんし、どうしましょうか」

揺杏「ああ、トランプ持ってるよ。ババ抜きでもする?」

由暉子「…………今日の復習でもすることにします」

揺杏「あっ、ごめん!冗談だから!」


由暉子「…………」カリカリカリ

揺杏(ホントに勉強始めちゃったよ)

由暉子「…………」ペラ


揺杏「ひーまーだー」

由暉子「…………」カリカリカリ


由暉子「…………しりとり」

揺杏「……え」

由暉子「り、ですよ」

揺杏「なになに?わたしに気を使ってくれてる訳?」

由暉子「あと5秒で負けです」

揺杏「あ、はいはい。リストバンド」

揺杏「いや~、ユキがそういう気の使い方できるようになるとはね~」

揺杏「これもわたしの教育の賜物ってやつ?」

由暉子「……ドラム缶」

揺杏「ごめんってば!」





由暉子「黒ごま」

揺杏「ま……ま……」


揺杏「マジおせぇ」

由暉子「……確かに」

揺杏「今何時?」

由暉子「あと10分で18時ですね」

揺杏「いや、おかしいでしょコレ」

揺杏「2時間も待たすとか……爽に文句言ってやる」プルルルルルル


爽『ほいほーい、どした?』

揺杏「いや、どしたじゃなくてさ」

揺杏「何で部室に誰も来ないんですか~?」

爽『へ?いや、今日は部活中止だけど』

揺杏「は?」

爽『なんか自動卓が壊れてさー、まあわたしがジュースこぼしたからなんだけど』

由暉子「そういえば、部屋に卓がありませんね」

爽『修理に出してるから、今日は中止ねーって誓子に頼んでメール送っといてもらったんだけど』

揺杏「来てないし」

由暉子「…………」

ピロロ ピロロ

由暉子「問い合わせしたら、今来ました」

爽『だしょー?んじゃまそゆことで』ピ

揺杏「まじか……」

由暉子「帰りましょうか」





由暉子「……教会内は、電波が入りませんからね」

由暉子「桧森先輩が悪い訳じゃありません」

揺杏「いやまあ、分かるけどね」


揺杏「うっおぁー……さむ」

由暉子「ずいぶん冷えますね」

揺杏「まったくだよ……まだ早い時間ならもう少しマシなのに」

揺杏「あーあ、無駄な時間過ごした」

由暉子「……そうですか」

由暉子「……」


揺杏「うん?どしたの、置いてくよ?」

由暉子「いえ、別に」

揺杏「ほらほら、早く帰ろうよ~」

由暉子「ええ」





―――――――有珠山高校 麻雀部部室


爽「じゃーん!とうとうわが部室にも自動卓がやってきました!」

誓子「ついに念願の雀卓を購入しましたみたいな言い方やめてくれないかな」

成香「修理から戻ってきただけですよね」

揺杏「しかも壊したの爽だし」

爽「……うぐ」

由暉子「なんにせよ、練習ができればそれでいいです」

爽「だ、だよな。ナイスフォロー……」

由暉子「フォローじゃなくて、卓が無い間遊びほうけていたのを咎めているんですが」

爽「ぐはっ!急所を突かれた!さわやはしんでしまった」

誓子「埋葬しておくね」

揺杏「香典は弾んどくから」

成香「こ、香典なんですか?」

由暉子「なんでもいいので、早く始めましょう……」

爽「よーし、とりあえず新しくこの部活のルールを定めよう」

誓子「一応聞いてはみるけど」

爽「卓に着いてるときは飲食禁止!」

揺杏「爽がそれを言うか……」

爽「あ、あと卓の修理代あとで徴収だから」

成香「え、えぇー」

誓子「……もう部費で落としておいたよ」

爽「さすが誓子!頼りになる!」

誓子「こういうときだけ調子いいよね」

揺杏「いい加減始めようよー」

爽「じゃあ最初の4人は―――」

誓子「爽抜けね」


揺杏「異議なし」
由暉子「ですね」
成香「じゃあそれで……」

爽「とほほ……」





爽「うおー久々に打ち疲れたー」

揺杏「そろそろやめにする?」

誓子「うん、そろそろいい時間だし」

誓子「なるかー、帰りどっか寄っていこうよ」

成香「そうですね、どこがいいですか?」

誓子「えっとねー」

揺杏「じゃあ―――」

爽「じゃ、残りの3人で帰るか」

揺杏「……そだね」

誓子「あ、そうなの?じゃあ、また明日ね」

成香「お疲れ様でした」

爽「ほいほい、じゃあ行こうか」

由暉子「はい。先輩方、お疲れ様でした」





爽「ユキあっちだっけ?」

由暉子「そうですね、ここまでです」

爽「じゃまた明日だな」

揺杏「……じゃね」

由暉子「はい、さようなら」




揺杏「…………」

爽「…………」

揺杏「……ねえ、爽」

爽「んー?」

揺杏「桧森先輩って、いいよね」

爽「…………言っておくけど、あの二人に割って入るのは無理だぞ」

揺杏「あ、いや……そういう意味じゃなくて」

揺杏「自分の思いを素直に表現できてさ~」

爽「まあ、そうかもね」

爽「そんなに我の強い奴じゃないけど、芯はしっかりしてる」

爽「本当に重要な事には、自分の気持ちを曲げない。そんな奴だよ」

揺杏「あは。わたしと真逆だね……」

揺杏「どーでもいい事には自分のしたい放題で、大切な事からは逃げてばっか」

爽「……何、泣いてんの?」

揺杏「泣いてない」ゴシゴシ

爽「あんまこするとブサイクになるぞ」

揺杏「いいよ、誰も見てないし」

爽「お前も私の前じゃ素直なのにな」

爽「なあ揺杏、私じゃダメか?」

揺杏「ダメ」

爽「冗談だけど即答は割と傷付くわ……」

爽「おい、とりあえずウチに寄ってけよ。そのまま帰すのは忍びない」

揺杏「うん、ありがと」





爽「はい」

揺杏「ん」

爽「家にあったかい飲み物それしかなかった」

揺杏(なんでくず湯……)

揺杏「いただきます」

爽「で、泣いてたのはユキの事なのか?」

揺杏「うっわ、分かっちゃう?」

爽「いや、ていうかもう原因はユキしか残ってないと思うんだけどな」

爽「いつぐらいからなんだ?」

揺杏「え……っと、夏前くらいかな」

爽「ほうほう、それはまたどうして」

揺杏「こう、衣装の採寸してる時にね、白いうなじがスーッとね」

爽「変態か!」

揺杏「あは、ごめんごめん。ちゃらけないとやってられなくて」

爽「真面目に話してたはずなんだけどな……」

揺杏「やっぱ無理だわ、爽とこんな真面目なムード耐えられないっしょ」

爽「むかつくなこいつ」

揺杏「あっはははははは」

爽「……もういい?元気出た?」

揺杏「出た出た」

爽「多分アレだな。ユキもお前の事嫌いじゃないと思うぞー」

揺杏「ええ?また適当な決めつけ?」

爽「まあまあ、こういうのは勢いが大事なんだよ」

爽「誰かも『愛の口づけによって互いに挨拶を交わしなさい。』って言ってたから大丈夫だ!」

爽「アイサツみたいなもんだ!」

揺杏「……誰か、じゃなくてペトロね」

爽「そうそう。ペトロなペトロ」

揺杏「じゃ、帰る」

爽「おー、頑張れ頑張れー」





―――――――誓子の部屋


誓子「それで、引き返してこっちにきたんだね」

由暉子「すみません。二人のお邪魔をするのはどうかとも思ったんですが」

誓子「ううん、なるかとはいつでも会えるから。たまには1年生もかまってあげないとね」

由暉子「……ありがとうございます」

誓子「……それで」

由暉子「正直、私にもよくわかりません」

由暉子「先輩と二人きりでいられて嬉しかったり、何を話していいか分からなくて、困ったり」

由暉子「……その、『無駄な時間だった』と言われて、とても悲しくなったり」

由暉子「獅子原先輩と二人で歩いていくのを見て、寂しくなったり」

誓子「まあ、あの二人は付き合い長いからね」

由暉子「……この気持ち、どれも今までに感じたことのあるものと似ているけれど、でも違う」

由暉子「こんなの、初めてなんです」

誓子「とりあえず、爽と揺杏の二人に関しては大丈夫―――」

由暉子「そうなんですか?」

誓子「うん、あの二人の間柄はそういうのじゃないから……」

誓子「で、どういうところが良いの?」

由暉子「そうですね。適当な性格ですし、勉強しないですし、麻雀も弱いです」

誓子「う、うん」

由暉子「でも、今私が部活に馴染めているのも、先輩のおかげだと思ったんです」

由暉子「よく衣装の事で構ってくれるし、いつのまにか私も先輩の傍に居たいと考えるようになっていました」

誓子「なるほどねえ」

誓子「でも、やっぱり解決できるのは本人たちだけだよね」

由暉子「……はい。覚悟を決めます」

誓子「今度、策を用意してあげるから」

由暉子「だ、大丈夫なんでしょうか?」

誓子「まあまあ。蛇のように賢しく、鳩のように素直であれとの教えもあるから……」

由暉子「それ、かなり意味が違っていると思いますけど」

誓子「気にしない気にしない。ユキはもうちょっと柔軟にいったらいいと思うよ」

由暉子「はあ……」





―――――――有珠山高校 麻雀部部室

ピロロ ピロロ

由暉子(メール……?)


【今日は揺杏以外部室に来ないからガンバレ!! O(≧∇≦)O  】


由暉子(策って、またこれですか!?)

由暉子(ああああ……急に緊張してきました……どんな顔していればいいんでしょうか)


ガラッ

揺杏「こ、こんちわ……ユキ」

由暉子「こ、こここんにちは」


揺杏「…………」

由暉子「…………」


揺杏「ね、ねえユキ?」

由暉子「な、なんでしょうか」

揺杏「ちょっと、こっち来て」

由暉子「はい」


揺杏「……んっ」

由暉子「…………」

由暉子「……………………」

由暉子「えっ」


揺杏「あ、あはは……とうとうちゅーしちゃったァ」

揺杏「…………」

揺杏「こ、これはアレだよほら桧森先輩がこうすれば大丈夫って言ったから」

揺杏「って言うか、めっちゃはずかしい~~~~!」

揺杏「ゴメン!これアレだからいわゆる挨拶だからアレであれあれ……」

由暉子(目の前にわたわたしてる人がいると、こっちはなんだか落ち着いてきましたね)


由暉子「先輩」

揺杏「はひぃっ!」


由暉子「右の頬にキスされたので」


由暉子「……左の頬も、差し出します」

由暉子「これが、私の答えです」


揺杏「…………え」

由暉子「でも、いきなりすぎですね。ほんとはもっと、手順を踏んでいただきたかったです」

揺杏「いや、それは爽が勢いが大事って言うから」

由暉子「ですが、それを実行したのは先輩でしょう?」

揺杏「返す言葉もないなあ……」





誓子「さて、なるか。ここは通さないよ」

成香「な、なんでですか?今日の部活は?」

誓子「……そこにはキターがあるからよ」

成香「意味が分からないのですけど……」

誓子「タワー絶賛建造中なの。今この部屋は不可触。いうなれば王牌だよ」

成香「よく分かりませんけどそういう事なら帰りましょうか……」

誓子「送っていくね」





揺杏「それで、『何事でも』」

由暉子「はい?」

揺杏「『自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい。』」

由暉子「……そうですね。私からは何もしないのは、卑怯ですね」

揺杏「うんうん」

由暉子「……では。その健やかなるときも、病めるときも」

揺杏「一気にぶっ飛んだね」

由暉子「予行演習、じゃダメですか?一度やってみたかったんです」

揺杏「気が早いなぁ……」



由暉子「――――死が二人を分かつまで」

揺杏「重い重い重いよユキ」

揺杏「こういうのはもっとシンプルに……」

由暉子「注文が多いですね……こほん」




由暉子「――――好きですよ、揺杏先輩」



カン!









『ゆあゆき』ってめっちゃ言いにくい。

参考:聖書本文検索

※この記事は書け麻記事です!